top of page


「空気から水を作り出す」技術への挑戦――ノーベル賞化学者が描く未来
2025年10月にノーベル化学賞を受賞したOmar Yaghi氏が、スタートアップ企業「Atoco」を通じて、乾燥した大気から飲料水を生成する革新的なビジネスに挑んでいます。その技術は、映画『スター・ウォーズ』でルーク・スカイウォーカーが乾燥した惑星タトゥイーンにて「水分凝結機」を使い、大気中から水を集めていた光景を現実のものにしようとしています。 この事業の根底には、Yaghi氏の切実な原体験があります。ヨルダンのアンマンにあるパレスチナ人居住区で育った彼は、電気も水道もない家で幼少期を過ごしました。9人の兄弟姉妹を持つ大家族において、少年の彼に課せられた極めて重要な任務は「水汲み」でした。2週間に一度、数時間だけ供給される公営水道をタンクに満たすため、家族を渇きから守りたいという一心で時間を厳守し奔走したのです。また、10歳の頃、休み時間の喧騒を避けて忍び込んだ学校の図書室で、化学の教科書にある「分子の構造図」に魅了されたことが、後のキャリアを決定づけました。 現在、世界的な気候変動による干ばつや水源の汚染により、安全な水の確保は人類にとって

Takumi Zamami
2月1日読了時間: 2分


バングラデシュ縫製業のグリーン化:世界一の「環境先進国」への飛躍と、置き去りにされる労働問題
バングラデシュのダッカを流れるブリガンガ川では、繊維生産によってもたらされた染料、化学薬品、そして鉛やカドミウムなどの重金属による汚染が常態化している。これは、バングラデシュの縫製部門がもたらす多くの害悪の一つに過ぎない。2013年に起きた大惨事 — 8階建ての縫製工場ビル「ラナ・プラザ」が崩壊し、1,134人が死亡、約2,500人が負傷するという「ラナ・プラザの悲劇」も記憶に新しい。 しかし、状況は変わりつつある。近年、バングラデシュは倹約型工場(“frugal” factories)の分野で、静かに、そして予想外のリーダーとなりつつある。 これらの工場では、廃棄物の削減、節水、そして気候変動の影響や世界的な供給網の混乱に対する強靭性を高めるために、資源効率の良い技術を組み合わせて導入している。現在、バングラデシュには268のLEED認証(環境性能評価システム)を受けた縫製工場があり、これは世界で最も多い数だ。 ダッカに近い都市、ナラヤンガンジュにあるファキール・エコ・ニットウェアのLEEDゴールド認証工場では、天窓の設置によって電気照明による

Takumi Zamami
1月20日読了時間: 3分


ケニアで始まった「グレート・カーボン・バレー」構想――地熱を使ったCO₂回収は現実解になり得るのか
ケニア中部のナイバシャ湖周辺は、地熱資源が豊富な大地溝帯の一角であり、複数の地熱発電所が国内電力の約4分の1を生み出している一方で、余剰エネルギーが十分に活用されていない。スタートアップのOctavia Carbonは、この余剰地熱を使って大気中から二酸化炭素(CO₂)を直接回収するDAC(Direct Air Capture)の実証試験を進めており、コンテナ型のモジュール装置でスケール拡大を狙っている。 この動きを軸に、「グレート・カーボン・バレー」と名付けられた構想も進む。ナイロビ出身のBilha Ndirangu氏らが中心となり、ケニアの豊富な地熱と再生可能エネルギーを生かしてDAC企業やほかのエネルギー多消費産業を誘致し、雇用創出やインフラ整備を通じて国の「グリーン産業化」を進めようというものだ。既にClimeworks(スイス)やSirona Technologies(ベルギー)、Yama(フランス)といった欧州企業がケニアでのパイロット計画を打ち出し、Cella(アメリカ)やCarbfix(アイスランド)など地中貯留のプレーヤーも関わ

Takumi Zamami
2025年12月30日読了時間: 2分


【ビル・ゲイツ】気候危機を救う最大の武器は“人間の創造力”だ
世界は2015年のパリ協定で掲げた温暖化抑制目標を達成できないことが、ほぼ確実になっている。政治家や企業の責任を指摘する声は多いが、根本的な問題は、排出削減を実現するための技術がまだ十分に存在せず、また多くの既存技術が依然として高コストであることだ。 だがビル・ゲイツ氏はこれを悲観ではなく「人類の創造力への信頼」として捉える。彼によれば、過去10年間の技術革新によって2040年の予測排出量はすでに40%減少しており、この流れをさらに加速させることができれば、目標に近づく可能性はあるという。 ゲイツ氏は20年以上にわたり気候変動の研究と投資を続け、2015年に設立した「ブレイクスルー・エナジー(Breakthrough Energy)」を通じて150社以上のクリーンテック企業を支援してきた。フェルボ・エナジー(地熱発電)やレッドウッド・マテリアルズ(EVバッテリーリサイクル)など、その中にはすでに世界市場で存在感を示す企業もある。彼の見立てでは、気候テクノロジーは公共善であると同時に、今後の経済を根本から作り変える巨大産業でもある。エネルギー市場、

Takumi Zamami
2025年10月25日読了時間: 4分


エチオピアの起業家の挑戦:持続可能エネルギーの課題解決に挑む
エチオピア出身の研究者イウネティム・アベイト氏は現在32歳。マサチューセッツ工科大学(MIT)の材料科学・工学部で助教授を務め、注目の若手研究者「Innovators Under 35」に選ばれました。幼少期に電力が不安定な環境で育った経験をもとに、持続可能なエネルギー供給の実現に取り組んでいます。 彼の原点は、停電が頻繁に起こる故郷での生活です。ロウソクの灯りで勉強し、制服を火で乾かし、牛糞を燃料に使う工夫を重ねた日々が、エネルギーの大切さを強く意識させました。そして、高校の化学の授業で燃料電池に出会い、魔法のような魅力を感じた彼は、エネルギー研究に進む決意を固めました。 その後、全国試験ではエチオピアで最高得点を取得し米国での学習を目指しましたが、入学までには三年を要しました。最終的に部分奨学金付きでコルンコルディア大学ムーアヘッド校に入学し、渡米の資金を調達するために企業や裕福な人々を訪ね歩き、多くの拒絶にも負けず、最終的に家族の知人の協力を得て渡米を果たしました。 大学は研究機関ではなかったため、彼はすぐに研究室を探し、カリフォルニア工科

Takumi Zamami
2025年9月26日読了時間: 3分


風力活用の船舶開発における脱炭素化への道すじ
風力は十分に活用されていない資源であり、環境負荷の高い海運業界をよりクリーンな未来へ導く可能性を秘めています。 みなさんは船舶輸送の温室効果ガス排出量が世界全体の約3%を占めることをご存じでしょうか。このまま成長が続けば、2050年までに10%に達するともいわれています。そんななか、小さな国の取り組みが注目を集めています。 太平洋に浮かぶマーシャル諸島では、古くから伝わるカヌー文化を活用しつつ、最新技術も取り入れた「風力」を使った船舶の開発が進められています。 マーシャル諸島の人々は、長い間カヌーで移動してきましたが、いまではディーゼル燃料を使う大型貨物船に大きく依存しています。しかし、海面上昇や異常気象に悩まされるなか、“自国の船を完全に脱炭素化しよう”という強い意志が生まれました。 地元のカヌー組織を率いるアルソン・ケレンさんは、若者に伝統的なカヌーを教え、さらに太陽光発電パネルを備えた大型の帆船もつくるなど、多彩な取り組みを進めています。その成果の一つが、2024年に処女航海を果たした「Juren Ae」という新たな貨物帆船で、最大80%の

Takumi Zamami
2025年2月18日読了時間: 2分


大規模なバッテリー火災はエネルギー貯蔵の未来に何を意味するのか
モスランディング発電所で起きた火災が、バッテリー安全性への懸念を高めています。 2025年1月、アメリカ・カリフォルニア州にある世界最大規模のバッテリー群を備えた「モスランディング火力発電所」で火災が発生しました。火災は数週間前に発生し、消火は数日で完了しましたが、周辺地域には健康面や環境面での懸念がまだくすぶっているようです。 バッテリー火災に対する不安は、モスランディングのような大規模施設での事件が報じられるたびに高まります。しかし一方で、太陽光や風力など再生可能エネルギーの割合が増えていくなか、エネルギーを安定的に供給するために「大容量の蓄電システム」は不可欠となってきています。つまり、安全面と必要性のバランスをどのようにとるかが大きな課題なのです。 今回の火災が起きたのは1月16日午後のことで、当初は小規模だった火があっという間に大規模に拡大しました。住民1,000人以上が避難し、周辺道路が閉鎖されるほどの騒ぎでした。原因はまだはっきりしていませんが、2020年に稼働を始めた最初期の300メガワット級バッテリーが主に被害を受けたようです。

Takumi Zamami
2025年2月18日読了時間: 3分


【2025年版】10の画期的なテクノロジー
MIT Technology Reviewが、今後数十年に渡り私たちの世界に大きな影響を与えると予想する、10の画期的なテクノロジーの2025年版。 ヴェラ・C・ルービン天文台 今年、チリの人里離れた地域に新しい強力な望遠鏡が稼働を開始します。この望遠鏡は、南半球の空を10...

Takumi Zamami
2025年1月14日読了時間: 4分
bottom of page