ケニアで始まった「グレート・カーボン・バレー」構想――地熱を使ったCO₂回収は現実解になり得るのか
- Takumi Zamami
- 2025年12月30日
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ケニア中部のナイバシャ湖周辺は、地熱資源が豊富な大地溝帯の一角であり、複数の地熱発電所が国内電力の約4分の1を生み出している一方で、余剰エネルギーが十分に活用されていない。スタートアップのOctavia Carbonは、この余剰地熱を使って大気中から二酸化炭素(CO₂)を直接回収するDAC(Direct Air Capture)の実証試験を進めており、コンテナ型のモジュール装置でスケール拡大を狙っている。
この動きを軸に、「グレート・カーボン・バレー」と名付けられた構想も進む。ナイロビ出身のBilha Ndirangu氏らが中心となり、ケニアの豊富な地熱と再生可能エネルギーを生かしてDAC企業やほかのエネルギー多消費産業を誘致し、雇用創出やインフラ整備を通じて国の「グリーン産業化」を進めようというものだ。既にClimeworks(スイス)やSirona Technologies(ベルギー)、Yama(フランス)といった欧州企業がケニアでのパイロット計画を打ち出し、Cella(アメリカ)やCarbfix(アイスランド)など地中貯留のプレーヤーも関わっている。
一方で、DACはコストが高く、大規模展開には時間がかかるとの批判も根強い。既存のプラントが自らの排出すら相殺できていないとの指摘や、電力を他産業の脱炭素に回すべきだという意見、DACが化石燃料依存を温存する「逃げ道」になりかねないとの懸念も示されている。さらに、政府支援や企業によるカーボンクレジット需要の減退、DACクレジット価格の高さなど、ビジネスとしての成立性にも疑問が投げかけられている。
加えて、地元コミュニティとの関係も大きな課題だ。長年この地に暮らしてきたマサイの人々は、地熱発電開発に伴う立ち退きや環境影響、そして発電所の近くにいながら電力供給を受けられない不公平感を訴えてきた。DAC向けの地熱需要が増えれば、同様の問題が再燃する可能性がある。事業側は雇用や職業訓練などを通じた還元を掲げるものの、期待と現実のギャップへの懸念は残る。
それでも、支持派はDACとグレート・カーボン・バレー構想が、気候変動の影響を強く受けるグローバルサウスに新たな経済機会をもたらし得ると見ている。批判と期待、リスクと可能性が交錯するなか、この地域が本当に「次の巨大エネルギー転換」を支える拠点となれるかどうかは、これからの実績と地域社会との向き合い方にかかっている。
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