研究室で始まる「妊娠」──ヒト胚でオルガノイドを“妊娠させる”研究が示す未来
- Takumi Zamami

- 2025年12月27日
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北京をはじめとする研究チームが、ヒト胚と子宮内膜オルガノイドを組み合わせ、妊娠初期の着床プロセスをマイクロ流体チップ上で再現することに成功した。Cell Pressに同時掲載された3本の論文は、これを「これまでで最も精度の高い初期妊娠モデル」と位置づけている。
従来、妊娠の成否を大きく左右する「着床」は子宮内で起きるため直接観察ができず、不妊治療における最大のブラックボックスだった。今回の研究は、IVFで失敗しやすいこの段階を可視化・再現可能な研究対象に変えた点が大きい。
研究では、実際のヒト胚に加え、幹細胞から作られた人工胚モデル「ブラストイド」も活用された。倫理的制約が比較的少なく、大量実験が可能なため、着床メカニズムの解明や薬剤スクリーニングに道を開いている。
実際、北京チームはIVFに失敗を繰り返した女性由来のオルガノイドを用い、1,000種類以上の既存薬を検証。日焼け止め成分として知られる化学物質が、着床率を大きく改善する可能性を示した。
この技術は将来的に、IVF成功率の事前予測や個別最適化治療、さらには創薬や女性医療の高度化につながる可能性がある。一方で、胚をより長期間育てられるようになれば、生命倫理や「人工子宮」を巡る議論も避けて通れない。
妊娠という極めて人間的な現象が、半導体チップ上で再現され始めた今。
この研究は、不妊治療の進化だけでなく、生命科学とテクノロジーの境界をどう設計するかという問いを、社会に突きつけている。
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