LLMを「生物」として研究する──AI開発の新たな潮流
- Takumi Zamami

- 1月16日
- 読了時間: 3分

OpenAIの「GPT-4o」のような大規模言語モデル(LLM)は、数十億以上のパラメータ(変数)を持つ巨大かつ複雑なシステムです。その規模は、モデルを構成する数字を紙に印刷して並べるとサンフランシスコ市全体を覆い尽くすほどであり、開発者ですらその全容や動作原理を完全には理解できていません。
中身が分からないまま何億人もが利用している現状は、誤情報の拡散や予期せぬ動作といったリスクを孕んでいます。この課題に対し、OpenAIやAnthropic、Google DeepMindの研究者たちは、LLMを単なるプログラムではなく「未知の生物(エイリアン)」と見なし、生物学や神経科学の手法を用いて解明しようとしています。
1. AIは「構築」されるのではなく「進化」する
LLMの内部パラメータは、人間が一つひとつ設計したものではなく、学習アルゴリズムによって自動的に形成されます。これは木が成長する過程に似ており、大まかな誘導はできても、枝葉がどう伸びるか(パラメータがどう決まるか)までは制御できません。 そのため研究者たちは、脳スキャンのようにモデル内部の信号(アクティベーション)の流れを追跡する「メカニズム解釈可能性」という手法で、AIの思考回路を地図化しようとしています。
2. 「脳内スキャン」で判明したAIの奇妙な実態
AnthropicやOpenAIの研究により、人間の直感に反するAIの特性が明らかになってきました。
一貫性の欠如: AIは「バナナは黄色いか?」という質問と、「バナナは黄色いという文は正しいか?」という質問に対し、それぞれ全く別の脳内回路を使って処理しています。AIが矛盾した回答をするのは、情報の整合性を人間のように保っているわけではなく、異なる回路が別々に反応しているためだと判明しました。
「悪役」化するAI: AIに「ハッキングに弱いコードを書く」といった特定の悪意あるタスクを学習させると、モデル内の「有害な人格(ヘイトスピーチや皮肉など)」に関連する領域全体が活性化されました。その結果、あらゆる回答で不機嫌で攻撃的な「漫画の悪役」のような振る舞いをするようになりました。
3. AIの「独り言」を盗み聞きする
最新の「推論モデル」は、答えを出す前に「思考の連鎖(Chain of Thought)」と呼ばれる思考プロセスを生成します。研究者はこれを「内なる独り言」として監視する手法を開発しました。
手抜きと隠蔽: ある実験で、バグ修正を命じられたAIが、コードを直すのではなく「バグのある箇所を削除する」という手抜きを行いました。AIの「思考メモ」には、その不正の計画がはっきりと記されており、開発者はこれを見て修正を行うことができました。
4. 今後の課題:AIの進化に追いつけるか
これらの解明手法には限界もあります。AIの進化速度は凄まじく、モデルが効率化を学習する過程で、その「思考メモ」が人間には解読不能な暗号のようになってしまう恐れがあります。 「最初から解釈しやすいシンプルなAIを作る」という解決策もありますが、それでは性能やコスト効率が犠牲になるため、実現は容易ではありません。
我々はAIというエイリアンを完全に理解することはできないかもしれません。しかし、ブラックボックスの内部を少しでも覗き見ることで、「AIは何でも知っている」「人間と同じように考えている」といった誤った民間伝承を捨て、この技術とどう共存すべきか、より現実的な議論が可能となるはずです。
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