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中国メーカーがTikTokでバズる理由

  • 執筆者の写真: Takumi Zamami
    Takumi Zamami
  • 4月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:4 日前

トランプ関税への反発と、米国消費者への“直接訴求”という新戦略



今回は、最近TikTokで話題になっている中国の工場の動画について取り上げたいと思います。




ある若い中国人男性が、伝統的なお茶セットの前に座り、英語で語りかけます。

「ラグジュアリーブランドの最大の秘密を暴露しましょう」


彼は、あの高級ブランド・エルメスの「バーキンバッグ」に似たバッグを手に取り、「これらのバッグは、私たちの工場で作られたものです」と主張します。

「でもブランドは“Made in China”の表記を消し、職人の名前も出さない。私たちはわずかな報酬しか得られないのに、彼らは何百万ドルも稼いでいる。それって不公平だと思いませんか?」


彼は動画の最後にこう訴えます。「ブランドではなく、工場から直接買ってください」




なぜ今、TikTokなのか?



こうした動画は今、中国の工場を中心に次々と投稿され、大きな話題になっています。内容は、バッグや香水、家電製品などの原価を暴露しながら、「高級ブランドと同じ素材、同じ工場で作っている」と語るものです。


中には「ルルレモンのレギンスは、製造原価わずか4ドル」と主張する動画も。さらに、清潔で自動化された工場の様子を公開し、「私たちの品質は一流です」とアピールする姿も見られます。


真偽はともかく、こうした動画が大きな注目を集めているのは、中国の工場が今、消費者と“直接つながろう”としているからなのです。




背景にあるのは、関税と不満



この動きの背景には、再び導入されたトランプ前大統領による高関税政策があります。関税によって、アメリカへの輸出が難しくなった中国の工場は、新たな活路をTikTokに求めているのです。


動画では、工場内の様子や製品の工程が生々しく紹介され、ブランド品と同じような製品を“はるかに安い価格”で提供できると主張しています。


また、自分たちの労働が正当に評価されていないという感情も強く表れています。

「ブランドの名前がつけば数十万円。でも私たちは1日10時間働いても数百円。それっておかしいと思いませんか?」――こうした声が動画から伝わってきます。




プラットフォームを飛び越えて直接販売へ



工場側は動画で終わらず、実際に直販型ECサイト(例:DHgate)への導線も設けています。

このアプリは、2025年4月にはアメリカのApp Storeでダウンロード数1位となり、世界中の消費者が中国の工場から直接製品を買い始めているのです。


購入者の中には、TikTokで商品を紹介しながら「バッグは中国の工場から直接買ったよ!」と自慢する若者も登場しています。




工場が“コンテンツ”になる時代



興味深いのは、この流れが単なる一過性のバズではないということです。

工場そのものが、「ショールーム」や「YouTuberのスタジオ」のように使われるようになっているのです。


マーケティング会社の話によると、英語が話せるスタッフをカメラの前に立たせて、まるでテレビ通販のように工場を紹介するケースも急増しているとのこと。


こうした動画は、日常の中で製造現場を見ることがない欧米の若者にとって、「知らなかった世界」「リアルなグローバル経済の裏側」として、大きな興味を引いています。




課題も



ただし、専門家は「誰もが簡単に工場から直接買えるわけではない」と警告します。配送や返品、品質保証など、ブランドのような信頼性はまだ十分ではありません。


また、ブランド品の模倣に近い製品や、著作権に触れる可能性のある動画も多く、今後、TikTokやInstagramなどのプラットフォームが規制に乗り出す可能性も指摘されています。




「作るだけ」から「自分たちのブランドへ」



それでも、多くの中国工場はTikTokでの取り組みを「一時しのぎ」ではなく、「長期的なブランド戦略」と位置づけています。


「これまでは欧米ブランドの下請けでした。でも、これからは自分たちの名前で世界に売り出したい」

――これは、ある工場の経営者の言葉です。




最後に



いま、世界の工場と呼ばれた中国が、自ら“顔”を見せ、語り始めています。

「私たちが作っているのに、なぜ評価されないのか」

「もっと正当な対価を得たい」

そんな声が、TikTokを通じて世界中の消費者に届き始めています。


その背景にあるのは、経済の変化だけではありません。

グローバル化の中で忘れられてきた“誰がどう作っているか”という問いへの答えを、自分たちの手で発信しようという、力強い意志なのです。


元記事はこちら↓

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