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中国の大学、「AI推奨」への動き

  • 執筆者の写真: Takumi Zamami
    Takumi Zamami
  • 10月18日
  • 読了時間: 2分
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欧米の大学がいまだに「学生のAI利用をどう制限するか」で議論する中、中国ではその真逆の潮流が進んでいる。主要大学が次々とAI教育を制度化し、学生に「AIを正しく使いこなすスキル」を身につけさせようとしているのだ。


2年前まで禁止対象だったAIは、いまや授業の中心テーマである。中国政法大学の教授は、AIを「講師であり、ブレーンであり、議論の相手」と位置づけ、使い方のガイドラインを授業に導入。文献レビューや要約、図表作成などへの応用を推奨する。AIを禁止するのではなく、「人間の判断を前提に、どう活かすか」を学ばせることが目的だ。


この流れは政府主導で加速している。教育部は2025年に「AI+教育」改革を発表し、思考力・デジタル技能・実践力の育成を全国で推進。北京市ではK-12(小中高)までAI教育を義務化した。清華大学や浙江大学などのトップ校はAI必修科目や学際的なAIプログラムを設置し、AIリテラシーを一般教養として位置づけている。


こうした背景には、「科学技術こそ生産力の源泉」という国家理念がある。スタンフォード大学の調査によれば、中国では80%の人々が新しいAI技術に「ワクワクしている」と答え、米英の2倍以上の数値を示した。AIを脅威ではなく、発展の機会と捉える文化が根強いのだ。


技術的にも、自国モデル「DeepSeek」を大学サーバーに導入し、学生証で無料利用できる環境を整備。欧米におけるOpenAIやAnthropicによる米加の全大学へのChatGPT Plus無償提供や、Claude for EducationのLSEやNortheastern大での展開などと似た流れではあるが、決定的に異なるのは主導権が企業ではなく大学側にある点だ。欧米製ツールが規制される中でも、中国では各大学が自ら環境を整備し、AIを学習インフラとして内製化している。


一方で、学生の間には「正しい使い方」への不安や、AI検出ツールを避ける“代筆市場”の存在もある。しかし教授たちは「禁止ではなく教育で対応する」方針を明確にしている。


就職市場では2025年、新卒求人の8割がAIスキルを歓迎要件とするなど、AI能力は「学習補助」から「生存戦略」へと変わりつつある。


英国Warwick University大学の研究者Meifang Zhuo氏は次のように語る。

「AI時代には“オリジナルとは何か”を再定義する必要がある。大学こそ、その議論の最前線であるべきだ」。


中国の大学改革は、単なる教育の変化ではない。AIを軸にした国家的人材戦略と産業競争力強化の一環であり、教育・雇用・技術の三位一体モデルとして今後も注目したい。



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