top of page

中国AIベンチャー、米国の制裁を逆手に取った技術革新

  • 執筆者の写真: Takumi Zamami
    Takumi Zamami
  • 2月18日
  • 読了時間: 3分

更新日:4 日前



今回ご紹介したいのは、中国の新興AI企業「DeepSeek」が開発したオープンソースの推論モデル「DeepSeek R1」です。OpenAIのChatGPT o1と比較しても、複数のベンチマーク(性能指標)で同等以上の結果を出しながら、コストを大幅に抑えているということで注目を集めています。


実は、中国のAI企業はアメリカの半導体輸出規制の影響を大きく受けています。先端的なGPU(高性能半導体)が手に入りにくい状況ですが、DeepSeekのようなスタートアップは効率化や協力体制を強化し、むしろ性能を高める努力を続けているのです。


具体的には、NVIDIAが中国向けに性能を制限したGPUを使用しながらも、独自の最適化を施し、メモリの使い方や計算処理を工夫して大規模モデル「R1」を完成させました。数学的・論理的な問題を解く際には、“チェーン・オブ・ソート”(段階的に論理展開を行う手法)を用い、高度な推論を可能にしているのが特徴です。


さらにR1は、“シンプルな設計”であることが高く評価されています。Microsoftの研究者によると、「余計なステップを省き、解答そのものにフォーカスしているため、高い効率を実現している」とのこと。加えて、ノートパソコンでも動作可能な6種類の小型版も公開されており、その一部はOpenAIの小型モデル「o1-mini」を上回る性能を示しているそうです。これにより、小さな研究機関や個人開発者にとっても大きなメリットが期待できます。


DeepSeek自体は2023年に中国・杭州で設立されたばかりの新しい企業ですが、背後には興味深いストーリーがあります。創業者の梁文峰(リャン・ウェンフォン)氏は、ヘッジファンド「High-Flyer」を経営しており、制限が強化される前に大量の高性能GPU(NVIDIA A100)を調達していました。これらを活用することで、大規模な研究開発を可能としました。


中国では、アリババやバイトダンスなどの大手企業、あるいは資金力のあるスタートアップがAI開発を牽引してきました。そうした中で、DeepSeekのように独立系で、しかも資金調達の予定がない状態で大規模モデルを開発する企業はきわめて珍しいといえます。チップ規制という不利な条件がありながらも、中国のAI企業は自らの「効率の悪さ」を自覚し、それを克服しようと取り組んでいるのです。今回のR1は、その成果の一例といえるでしょう。


また、中国では若い研究者を中心にオープンソース文化が急速に広がっています。DeepSeekの事例に加え、アリババなども自社モデルを公開しており、中国発の大規模言語モデルが世界の約3割を占めるまでになりました。アメリカの制裁をきっかけに、中国企業はよりいっそう効率と協力を重視するようになり、オープンソースの動きがさらに加速する可能性があります。


今後、チップ不足や国際情勢による圧力が続くなか、中国のAI業界は効率やリソースの共有を武器に生き残りを図ることになりそうです。すでにアリババが北京のスタートアップと共同研究体制を発表するなど、業界再編の動きが進んでいます。このような競争と協力の連鎖が、AI技術のさらなる進歩を後押しするかもしれません。 ↓元記事はこちら↓

Comments


bottom of page