Artificial intelligence

LightShed:デジタルアートのAI対策を無効化するツールが開発された意図とは

LightShed:デジタルアートのAI対策を無効化するツールが開発された意図とは

AIとアートの間で続く「いたちごっこ」の話です。

生成AIは、私たちがネットに公開した画像を集めて学習し、新しい絵を生み出します。しかしその過程で、アーティストの絵が無断で使われることが問題になってきました。AIが学習してしまうと、画風を真似され、仕事を奪われるかもしれないという不安が広がっています。

こうした中で2023年に生まれたのが、Glaze(グレイズ)やNightshade(ナイトシェイド)という「毒」を仕込むツールです。アートの画像に目立たない形で細かい変更(摂動)を加え、AIが正しく学習できないようにする技術で、アーティストたちは自分の作品を守る盾として使ってきました。

ところが今回、LightShed(ライトシェッド)という新しい技術が登場し、GlazeやNightshadeが仕込んだ「毒」を取り除いてしまうことができるようになったのです。これにより、作品が再びAIの学習に使える状態に戻ってしまいます。

LightShedの研究者たちは「アーティストから作品を盗むことが目的ではない」と話しています。むしろ「こうした保護ツールは万能ではない」という現実を知ってほしいと考えているのです。なぜなら、企業側が裏で毒を除去して学習を続けていても、私たちに伝えない可能性があるからです。

AIモデルは、画像の中でどこからどこまでが同じカテゴリーかを判断する境界を持っています。Glazeは画風を誤認させ、Nightshadeは被写体自体を誤認させる仕組みで、この境界を揺るがします。しかしLightShedは、画像からこの「毒」だけを抽出して取り除く方法を学習することで、AIが正しく作品を学習できるようにしてしまうのです。

現在、750万人以上のアーティストがGlazeを使っています。まだ法整備が整わない中、こうしたツールは大切な防御手段となっていますが、LightShedの登場で「これだけで安心できるわけではない」という現実も突きつけられました。

ただ、GlazeやNightshadeの開発者も「これらは未来永劫の解決策ではない」と最初から認識しており、それでも使う意味があるとしています。なぜなら、AI企業に対して「アーティストは本気で作品を守ろうとしている」というメッセージを送り、AI企業がアーティストと協力する道を選びやすくする抑止力になるからです。

LightShedの研究者も、これを使ってさらに新しい防御技術を生み出したいと考えています。AIに対して完璧な防御は難しいかもしれませんが、アーティストの側に再び力を取り戻す技術を模索し続けています。

元記事はこちら

MIT Technology Review

This tool strips away anti-AI protections from digital art

関連記事

Artificial intelligence

AIは人間の数学者に追いつけるのか?

今回は「AIは人間の数学者に追いつけるのか?」という最先端の話題をご紹介します。 最近、AI、特にChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)が高校レベルの数学を驚くほど解けるようになってきました。これが専門家の間でも話題になっていて、「じゃあ、AIは研究レベルの数学までできるようになるのか?」

2 min
Artificial intelligence/Culture/Business/Robot

Robot

進化する世界のロボット

今回は、ロボットの進化と社会への影響について、とても興味深い話題のご紹介です。 スタンフォード大学で生体工学を教えるジャン・リファード(Jan Liphardt)さんは、ロスアルトの街中を四足歩行のロボット犬と散歩しています。その姿に、子どもは興味津々、親は少し不気味がり、年配の人たちは無関心。まさ

2 min
Robot/Business/Artificial intelligence

Robot

ようこそ、ロボットの街・オーデンセへ

みなさんはデンマークにあるオーデンセという町をご存じでしょうか。 今回は、協働ロボットで注目を集めるデンマークの小都市・オーデンセについてお話ししたいと思います。 この街は、11世紀に最後のヴァイキング王が命を落とした場所であり、また童話作家アンデルセンの故郷として有名です。しかし最近では、別の顔を

2 min
Robot/Business/Culture

最新記事

すべて表示

Artificial intelligence

AIは本当に仕事を奪うのか? データが示す労働市場の現在地

AIがホワイトカラーの仕事を奪うという懸念が広がっているが、現時点の労働市場のデータは「大規模な雇用の喪失は起きていない」と示している。今後の急激な変化の可能性は否定できないものの、データに基づく冷静な現状分析と、来るべき移行期への備えが求められている。 ■ 「AIによる雇用崩壊」はデータで裏付けら

2 min
Artificial intelligence/Business

Artificial intelligence

AIチャットボットによる電話番号の流出 ー浮き彫りになる新たなプライバシーリスク

近年、Googleの「Gemini」やOpenAIの「ChatGPT」をはじめとする生成AIチャットボットが、個人の電話番号や住所といった個人識別情報を漏洩させる事態が相次いで報告され、新たなプライバシーリスクとして強い懸念を集めている。実際に、見知らぬ人からの着信が殺到したり、AIの誤った案内によ

2 min
Artificial intelligence

Business

米国でキリスト教徒向け新通信網が登場 ーーポルノやジェンダー関連コンテンツを遮断へ

米国の通信業界において、キリスト教徒層を標的とした新たな仮想移動体通信事業者(MVNO)「Radiant Mobile」が、T-Mobileのネットワーク回線を借り受けて2026年5月5日にサービスを開始した。 この新サービスは、大人のアカウント所有者であっても解除することができないネットワークレベ

2 min
Business/Social Media